母は、定年まで看護師として働いた。
人の世話をする仕事を続け、家に帰れば家事をする。子どもの頃から、母が何もせず、ゆっくり過ごしている姿をあまり見た記憶がない。
ずっと働き、ずっと誰かを支える側だった。
その母の介護が始まって、6年か7年になる。
最初は父がそばで支えていた。けれど、その父が亡くなり、母はグループホームで暮らすことになった。
入居してから、約3年になる。
グループホームには毎月約20万円かかる
現在、母のグループホームには毎月およそ20万円かかっている。
住居費、食費、介護サービスにかかる費用。そのほかにも、医療費や日用品などが必要になる。
月20万円。
年間にすれば、かなりの金額になる。
しかも、介護には終わる時期が書かれた予定表がない。
あと何年続くのか。
今の費用が、この先も同じなのか。
状態が変われば、さらに支出が増えるのではないか。
通帳の残高を見ながら考えると、簡単に安心できる金額ではない。
父が亡くなり、自宅での生活は難しくなった
父が元気だった頃は、母を支える人が家にいた。
もちろん、父にも負担はあったと思う。
それでも、夫婦で暮らしている間は、何とか日常が成り立っていた。
その父が亡くなった。
母だけを自宅に残すことは難しかった。
私たち家族が、交代で付き添いながら生活を支える方法も現実的ではなかった。
家族には家族の仕事があり、生活がある。
気持ちだけでは介護を続けられない。
母が安全に暮らせる場所として、グループホームを選んだ。
施設に入って、母は穏やかになった
入居前は、施設に入れることへの迷いもあった。
住み慣れた家を離れる。
家族と一緒に暮らせなくなる。
本人にとって、寂しい選択になるのではないか。
そんな思いがなかったわけではない。
けれど、グループホームに入ってから、母は穏やかになった。
今が、これまでで一番穏やかな表情をしているように見える。
決まった時間に食事をし、日々の生活を支えてもらう。
困ったときには、そばに人がいる。
母の状態を理解した職員の方が、無理のない形で接してくれる。
自宅で不安を抱えながら暮らすよりも、今の環境の方が母には合っていたのだと思う。
ずっと人を支えてきた母が、支えてもらっている
母は、看護師として長く働いた。
病気やけがをした人を支え、家では家族を支えた。
若い頃から定年まで、働きつめだった。
その母が今は、食事を用意してもらい、生活を見守ってもらっている。
以前なら、人に世話をしてもらうことを素直に受け入れなかったかもしれない。
けれど、今の母の表情を見ると、ようやく力を抜いて暮らしているようにも見える。
ずっと誰かのために動いてきた人が、人生の最後の時期に、誰かに支えてもらう。
それは、悪いことではない。
むしろ、母にとって必要な時間だったのかもしれない。
月20万円を、高いか安いかだけでは決められない
介護費について考えると、どうしても金額が先に立つ。
毎月いくらかかるのか。
年金で足りるのか。
預金はあと何年持つのか。
家族はいくら負担することになるのか。
もちろん、現実から目をそらすことはできない。
介護が長く続けば、お金は減っていく。私にも自分の家庭があり、教育費や住宅費、自分たちの老後がある。
だから、月20万円を軽いとは思わない。
それでも、母の穏やかな表情を見ると、単純に高いとも言い切れない。
このお金で、安全な場所があり、毎日の食事があり、見守ってくれる人がいる。
何より、母が不安の少ない時間を過ごせている。
施設費は、ただ母を預かってもらうためのお金ではない。
母が穏やかに暮らすためのお金でもある。
介護費は、残高だけでは測れない
親の介護が始まると、子どもは管理する側になる。
施設を選び、契約をし、通帳を確認し、必要なものを届ける。
いつの間にか、親の人生を数字で考える場面が増えていく。
けれど、本当に見なければならないのは、残高だけではない。
その人が、どんな表情で暮らしているのか。
不安なく一日を過ごせているのか。
その場所が本人に合っているのか。
母のグループホーム費は、毎月約20万円かかる。
この先、何年続くのかは分からない。
不安がなくなることもない。
それでも、定年まで働きつづけ、ずっと人を支えてきた母が、今は穏やかな表情で暮らしている。
その姿を見ると、この20万円を、高いか安いかだけで考えることはできない。
親の介護費とは、残高だけでなく、その人が今、どう生きているかまで含めて考えるものなのだと思う。
この記事が印象に残ったら、♡を押していただけるとうれしいです。
50代の家族・仕事・お金について、もう少し個人的な実体験はnoteでも書いています。
→ note「昭和とAIのあいだ|実体験ノート」を読む
親のことが気になり始めたとき、何から確認すればよいかを整理したい方へ。
「親のこれからナビ」では、12の質問から今の準備状況を確認できます。



コメント